
文・御嶽亜由美(みたけ行政書士合同事務所)
「いざ施設に入ろうとしたとき、保証人がいなくて断られたらどうしよう」
そんな不安を抱えている独り身の方は、少なくないと思います。
結論から申し上げます。
身元保証人がいないことだけを理由に、施設は入居を拒否できません。厚生労働省は、「身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない」と明確に示しています。
ただし、これは「だから何も心配しなくていい」という話ではありません。
なぜ施設は保証人を求めるのか
法律上は拒否できないにもかかわらず、多くの施設が身元保証人を求めるのには理由があります。施設側には、二つの切実な不安があるからです。
誰が費用を支払うのか?
入居者が認知症になるなど判断能力が低下したとき、月々の費用を誰が管理し、支払うのか。その見通しが立たない入居者を、施設側は受け入れにくいと感じます。
誰が遺体を引き取るのか?
遺体の引き取り、荷物の処分、退去手続き——入居者が亡くなった後にこれらを担う人がいなければ、施設が対応に困ることになります。
この二つの不安が、施設が身元保証人を求める実務上の理由です。
契約で、施設側の不安を解消できる
逆に言えば、この二つの不安を解消できれば、身元保証人がいなくても施設との関係を築きやすくなります。
そのための備えが、二つの契約です。
任意後見契約
判断能力が十分なうちに、信頼できる人と結んでおく契約です。将来、認知症などで判断能力が低下したとき、その人が財産管理や費用の支払いを代わりに担います。施設側の「費用を誰が払うのか」という不安に、正面から応えることができます。
死後事務委任契約
亡くなった後の手続き(遺体の引き取り・荷物の処分・各種解約など)を、あらかじめ信頼できる人に委任しておく契約です。施設側の「亡くなった後、誰が対応するのか」という不安を、事前に解消できます。
この二つの契約を組み合わせることで、施設が保証人に期待する役割の多くをカバーできます。
「頼める人がいない」場合はどうするか
任意後見契約も死後事務委任契約も、信頼できる人に頼む必要がある——そう聞いて、「その人がいないから困っているのだ」と感じた方もいるかもしれません。
おひとり様の終活において、これが最も行き詰まるポイントです。ですが解決策はちゃんとあります。
頼める人がいない場合は、専門家に依頼することができます。行政書士などの士業は、任意後見と死後事務委任をセットで引き受けることができます。専門家が任意後見人であれば、施設への説明や交渉も任せられます。施設側にとっても、専門家が後見人として関与していることは安心材料になります。
さらに、士業であれば遺言書の作成も併せて対応できます。亡くなった後の財産の処分やお墓の引き継ぎまで、まとめて整理することができます。
「頼める人がいない」こと自体が、専門家を頼る理由になります。
元気なうちに、準備しておくことの意味
任意後見契約は、判断能力があるうちにしか結べません。「そのうち考えよう」と思っているうちに、手を打てる時期を逃してしまうことがあります。
施設への入居を具体的に考え始めたとき、あるいはまだ先のことだと思っているときこそ、準備を始めるタイミングです。
「自分の場合、何が必要か」——それを整理するところから、一緒に始めることができます。
当事務所の通常の面談は有料ですが、無料でご相談いただける機会も設けています。まず話を聞いてもらいたいという方は、お気軽にご連絡ください。
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