「死んだら、あとは行政が何とかしてくれる」は本当か?

文・御嶽亜由美(みたけ行政書士合同事務所)

「自分が死んだら、あとは行政が何とかしてくれるんでしょう」——そう思っている方も、少なくないと思います。

結論から言うと、それは一部正しく、一部間違っています。

行政は最終的に動きます。しかしそこから先に、実は困る人がいます。それが誰かによって、あなたの「今」の暮らしの安定が変わってきます。


自治体がしてくれるのは火葬まで

身寄りがなく、相続人が見つからない場合、最終的には自治体が火葬等を行います。これは法律で定められた仕組みで、事実です。

まず戸籍などから遺族が捜索され、見つからなければ自治体が火葬等を行います。ただしそれ以降のこと、例えば遺留品や財産の整理などについては、自治体は行ってくれません。

火葬までは、行政が対応してくれます。しかしその先の手続き、つまり残された部屋や荷物、契約の後始末は、また別の話です。


本当の問題は、死んだ後ではなく「今」に跳ね返ってくる

この状況を、実は一番負担に感じているのは、あなた自身ではありません。今、あなたを受け入れている、あるいはこれから受け入れようとしている、大家さんや施設です。

賃貸住宅の場合、入居者が亡くなると、部屋の契約を解除し、残された家財(残置物)を片付けなければ、次の入居者を迎えられません。しかし、相続人の有無や所在がわからないと、この解除や処分が法的にできません。連絡が取れないまま部屋が空き家になり、大家さんは収益を失います。

これが、「保証人がいないと施設に入れないのか」という問題の、もう一つの根っこです。大家さんや施設が単身の高齢者の入居に慎重になるのは、「この人が亡くなったとき、誰が対応してくれるかわからない」という不安があるからです。

つまり死後の備えがあるかどうかは、亡くなった後の話ではなく、今部屋を借りられるか、施設に入れるかに直結しています。


国も、この問題に取り組んでいます

実は、国もこの構造を認識し、対策を講じています。

国土交通省と法務省は2021年、単身高齢者が賃貸住宅に入居する際、死後の契約解除・残置物処理をあらかじめ第三者に委任しておく「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。これは、単身高齢者の入居を後押しするための制度です。

つまり「死後、誰かに事務を託しておく」ことは、大家さんや施設に対して、「この人は対応が決まっている人だ」という安心材料になります。これは、亡くなった後のための備えというより、今の生活の選択肢を広げるための備えです。


死後事務委任契約でできること、できないこと

生前に、信頼できる第三者へ、葬儀の手配、行政への届出、公共料金や賃貸の解約、遺品整理などを託しておく契約が死後事務委任契約です。何をどこまで頼むか、具体的に決めておくことができます。

ただし、この契約でできないこともあります。「誰に財産を渡すか」という相続の話は、死後事務委任契約の範囲外です。これは遺言の領域になります。


今からできることを、一緒に整理しましょう

「死んだ後は行政が何とかしてくれる」——それ自体は間違いではありません。ただ、それを待つ間に、今のあなたの暮らしに影響が出るとしたら、備えておく意味は変わってくるはずです。

当事務所の通常の面談は有料ですが、無料でご相談いただける機会も設けています。まず話を聞いてもらいたいという方は、お気軽にご連絡ください。

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